歯医者選びで人生が変わる? そんな風に思う人は少ないかもしれません。

では、実際はどうでしょうか。患者さんの中には20、30代に虫歯の治療を繰り返し行い、40、50代になって歯を失う方が多くいらっしゃいます。1本歯を失うと他の歯にも問題が起こる可能性も高くなります。また、歯周病が隠れていることも多く、糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞など命に関わる病気のリスクも高くなります。
実際に、成人の8割が歯周病であるといったデータもあり、これは多くの日本人が抱える問題でもあります。

当院に来院される患者さんも同様に、「自分の通っている歯医者は大丈夫だ。」「歯医者の治療はこういうものだ。」と思い込み、取り返しのつかない状態になって初めて気付かれることも少なくありません。

そこで今回は、当院で治療が終了した、とある20代の患者さんが小学校から高校生まで同じ歯医者に通い続けて、残念な結果となってしまった本当の話をご紹介します。

「歯ブラシの時に血が出るのですが、大丈夫ですか?」

現在27歳の彼女は、幼稚園の時からたくさんの虫歯があったそうです。
小学校の時に虫歯治療を行った際、1度だけ歯ブラシの指導を受けた記憶があるそうです。
また、中学校の時には約3年間、歯並びが悪かったため、矯正治療を行っています。

矯正治療中、先生に「歯ブラシの時に血が出るのですが、大丈夫ですか?」と質問したところ、「悪い血が出ているから、悪い血ができったら良くなるから心配しなくて大丈夫だよ。」と言われたそうです。それからは歯茎から血が出ても「悪い血が出ているから、血が出るのはいいことだ」と思っていたそうです。おそらく矯正治療で歯ブラシがやりづらいこともあり歯周病になっていたのでしょう。更に、矯正治療中にも虫歯をつくってしまったようです。

高校生になり、ある時、数カ月前に虫歯治療で銀歯を入れたところに突然激痛が走り、歯医者を受診したところ、神経が死んでいると言われたそうです。その時、初めて歯の神経の治療を経験し、とても痛かったこと、神経が取られてしまったショックで、2度とこんな経験はしたくないと思ったそうです。

他にも、治療してもらった前歯が変色し、よくみるとデコボコしている所があったり、またフロスをすると引っ掛かったり、気がつくと色々な所に不具合が表れていましたが、歯の治療というのはこういうものだと思っていたそうです。

彼女はそれまでは定期的に歯医者に通っていましたが、これらの経験から、歯医者に対する信頼や期待が低くなり、足が遠くなったそうです。

23本の歯に虫歯が再発

彼女は24歳の時、仕事中に突然銀歯が取れて、約6年ぶりに違う歯医者に行きました。お口の中全体のレントゲンを撮り、診てもらった上で、先生から「歯はよく磨けているし、ほかの歯も取れた歯も、今回は大丈夫。」とのことだったので、取れた銀歯はそのまま戻してもらったそうです。

それから約2年後、今度は高校生の時に神経を取った歯の違和感を感じ、当院に来院されました。私たちは、症状の話だけでなく、これまでの歯医者での経緯や歯に対する思いなどを詳しくお伺いしました。その上で「本当はどうしたいのか?」「どうありたいのか?」と、お伺いしたところ、
「もう二度と虫歯にはなりたくない。」
「自分の歯で一生美味しく食事をしたい。」
という答えが返ってきました。

そこで、まずは自分のお口の中がどのような状態なのかをしっかりと把握するために、時間をかけて精密検査をしました。
結果、23本の歯に大小の虫歯を発見し、検査によって歯周病も発覚しました。
彼女が元々言っていた、違和感がある部位は根の先に膿がたまっている状態で、銀歯を取るととても大きな虫歯になっていました。別の2年前につけてもらった銀歯の下も大きな虫歯となっており、もしこのまま放置していたらこの歯も神経の治療をすることになっていたかもしれません。
精密検査の結果から、以前の歯医者さんに裏切られた気持ちが強まったそうです。

初診時の口腔内写真
初診時の口腔内写真
初診時のレントゲン写真
初診時のレントゲン写真

意外と行われていない”精密”な検査

このエピソード、実は他人事ではありません。実際に当院においでになった患者さんの多くが同じような状態だからです。数年のブランクはありますが、彼女は20年間歯医者に通っています。それにもかかわらず、なぜこのような悲惨なことが起こるのでしょうか?

まず考えられることは、精密に検査をされていないことです。実際に患者さんに聞いてみても、ほとんどの方が歯周病の検査、かみ合わせの検査を受けたことがない、もしくは覚えていないとお答えになります。彼女も歯周病の検査を受けたのは初めてで、歯ぐきから血が出るのは、歯周病という病気が原因だということをここで知りました。

虫歯、歯周病、かみ合わせについての検査が適切に行われていないために、歯科医師自身も問題を把握しきれていない可能性があります。虫歯の状態を正確に診断するためには精密なレントゲン撮影が必要ですし、また歯周病の検査をしなければ歯周病の状態もわかりません。さらに、かみ合わせの検査は、治療の精度を高めることにつながるのですが、手間がかかることもあり、ほとんどの歯医者で行われないのも現状です。

では、彼女は改善に向けて、どのような治療を受けたのでしょうか。次のコラムでは、実際に彼女が受けた予防プロブラムや治療について、詳しくご紹介したいと思います。

(歯科医師:中山俊太郎)

精密検査について詳しく見る

→人生を変える歯医者選び(後編)

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