高校生が寄付してくれました

高校生が寄付してくれました

コロナウイルスによる自粛生活が始まって約一カ月の4月下旬。

日常生活では、子供たちも学校や、幼稚園が休校で毎日密を避けてどう過ごそうか考える日々でした。

診療室では、現状の感染対策はこれで十分なのか、マスクはまだ少し在庫があるけど、アルコールは毎日どれくらい消費すれば備蓄に耐えていけるのか、全従業員の感染対策をどのレベルで施すか、一番必要な救急病院や、感染者を行け入れる病院が不足するようなことがあってはならないし、そして何より世間は明日はどんな一日になるのか、すべての国民が心配な毎日を過ごしていたころだったと思います。

立崎さんとの出会い

そんなある日、田舎の父が、「こんな記事があるよ」と専門職の新聞記事を見せてくれました。

それは、高校一年生の女の子が自身の3Dプリンターで作製したフェイスシールドを医療機関に無料で寄付しているという内容の一面でした。

4月頃は、マスクもフェイスシールドも買いが殺到し、医療物資の材料屋も在庫を持ち合わせているところは少ない状態でした。インターネットでは、どんなものかわからないマスクや、フェイスシールドが10倍以上の高値で取引され、簡単に手が出せる状況ではありませんでした。

私は急いで、彼女にメールをしました。するとすぐにお返事をいただき、あっという間に希望する個数おくってくださいました。

届いた品物は新聞紙と段ボールで丁寧に梱包され、ドキドキしながら最初に装着したのを覚えています。

フェイスシールドの効果

このフェイスシールドによって、私たち医療者は、患者さんからの治療飛沫による、感染を防ぐことが出来、それによって、私たちも患者さんに感染をさせるリスクが軽減されます。

そして、このように見ず知らずの医療機関に、自分自身の出来る力を発揮して寄付をしてくださる高校生がいてくれることは、どんなに素晴らしいことでしょうか。

このフェイスシールドと一緒に仕事をすることが、私たち医療者にとっても、大きな希望と、患者さんのために翻弄出来るエネルギーになっています。

私たちLife Care Dental Officeは、立崎さんのような社会に貢献される若者を心より、応援致します。1,022個のフェイスシールドを全国に寄付してきた彼女の功績は幾度もテレビで取り上げられています。

(文責:中山 和嘉子)

歯科医院の感染予防の実態とは

歯科医院の感染予防の実態とは

2014年読売新聞の記事は今でも記憶に新しいですが、国立感染研究所の研究員による調査で、歯を削る機器を患者ごとに滅菌処理することなく使いまわしている歯科医院が約7割にも及んだのです。

また最近では、ネットの記事で「新型コロナ感染の懸念 歯科医院の5割が危ない理由」 として器具の使いまわし記事が書かれていました。

コロナウイルスの影響で世界中が困惑する中、歯科医院での感染予防はどうなっているのか。なぜ、未だに使いまわしが横行しているか。今回は緊急で考えていこうと思います。

感染予防対策にかかる見えないコスト

感染予防対策には機器を滅菌する設備、患者ごとに交換するため機器の数、滅菌する時間、滅菌する人件費などのコストがかかります。

例えば、一日100人患者さんが来る歯科医院であれば、歯を削る道具は最低でも20本程度の用意が必要です。しかしそれは1日数回器具を滅菌した場合で、その場合には人件費がかかります。もし人件費や人手不足などの影響で滅菌作業が出来ない場合にはその倍(40本程度)は必要になります。歯を削る機器は1本5万円~10万円程です。

常に感染予防対策を行うためには非常にコストがかかります。

本来あってはならないことですが、経営の圧迫、コスト削減が「機器の使いまわし」の主な理由であると考えられます。

歯を削る以外の機器にも潜む感染リスク

2014年以降少しずつではありますが、歯を削る機器の使いまわしは減ってきています。しかし、それ以外の器具、超音波スケーラー(歯石をとる機器)や歯をクリーニングする機器(エアフローなど)については、9割以上の歯科医院で使いまわしが起きていると言われています。

実は歯を削る機器よりも歯石を取ったり、クリーニングする機器の方が出血の頻度が多いため感染のリスクが高いのです。

未だに報道されたもの以外については、多くのところで「使いまわし」が起きているようです。 感染予防対策が確実にされている歯科医院かどうかは、歯を削る機器以外が滅菌されているかどうかもポイントになるかもしれません。

感染予防対策をしている歯科医院の見分け方

アメリカではキンバリー事件(歯科医院でのHIV院内感染事故)以降、機器の滅菌・消毒は義務付けられ、厳しい罰則が設けられています。しかし、日本ではまだ明確な義務付けはなく罰則等もありません。

そのため、日本では患者さん自身が病院等での院内感染に対して敏感になる必要があります。

確実な感染予防対策をしている歯科医院かどうかの見極めのポイントは、受付や歯科衛生士、歯科助手などそこで働いているすべての人が感染予防対策について詳しく、聞いた場合にはすぐに明確に答えられるかどうかです。

2つ目に、ウイルスや細菌のまき散らしが起こらないような対策として、診療室は個室もしくは診療台ごとに大型のバキューム(歯を削った時などに拡散するウイルスや細菌を吸う機器)があること。

3つ目に、院内が慌ただしく、診療台や機器、床などが清潔でない歯科医院は要注意です。

病気を治すために歯科医院に行って、病気になってしまったら本末転倒です。感染予防の視点からも歯科医院選びは慎重に考える必要がありそうですね。

(歯科医師:中山俊太郎)