【情熱対談】子ども時代から始まるむし歯格差

【情熱対談】子ども時代から始まるむし歯格差

色んなお子さんのお母さんをお見かけしますが、おそらく多くの親が持つ悩みは同じではないでしょうか。

  • 絶対にむし歯にさせたくない
  • 歯並びが気になる


このような想いを持つ親御さんがお子さんを連れて「予防したい」「フッ素を塗ってほしい」と、来院されることが多いですね。

子どもの歯科の健康について、親としてどう考えていったらいいかをご紹介したいと思います。

■ Life Care Dental Office
歯科医師 中山 和嘉子(W)

■ 東京虎ノ門 グローバルスクエア歯科
副院長 小児歯科専門医 丘 久恵(O)

〜依然埋まらないお口の中の健康格差〜

W: 私がもともと大学病院で働いていた時は、開業医から最後の砦として紹介されて来るお子さん、つまり深刻なむし歯の方ばかりだったんです。現在、開業医として働いていると、依然むし歯の子はいます。しかし、昔に比べると、お口の中が全体的にむし歯になっているお子さんは減ってきているとは思います。

歯科医師として務めてきたこの12年で実感したことを挙げると、やはり「健康格差」がすごいなと感じます。多くのお母さんは定期的にお子さんを連れて来るのですが、お口の中の状況が悪いお子さんと、そうじゃないお子さんとの差がとても激しいのです。

「絶対むし歯にさせない」という健康意識を持っているお母さんの子がいる一方で、放置されている子もいます。そういった患者さんは、来院も来たり、来なかったりと、飛び込みで受診され、お口の中もプラークだらけで、むし歯は1個か2個、受診ごとに増えているのです。1回の定期検診の後に1、2回治療してそれっきり、そしてまたトラブルが起きて飛び込み受診になる、といったことが繰り返されています。

O: たしかに、前から4番目、5番目の臼歯といわれる大きめの歯がむし歯になりやすく、しかも、その後もよく噛むために、そのむし歯のところから欠けやすくなっていることが多いですね。

W: そうなんです。特に噛む力の強い子は、一度治療しても、詰め物がとれやすくトラブルにつながりやすい。

O: そうならないためにも、親がしっかりと監督しながら、子どもが自分でしっかりと歯ブラシを使ってセルフケアを出来るようになっている必要があります。

セルフケアについて〜小学校3年生を目安に〜

O: セルフケアは、なかなか浸透していませんね。「あ、うちは3ヶ月に一回診てもらってるから大丈夫。」「フッ素を塗ってもらっているから大丈夫。」という具合に、歯医者に行くことで満足している親御さんは多いです。

ゴールとしては、子ども自身がセルフケアを出来るようになることです。目安としては、大体小学校3年生ごろだと、一般的に言われています。もちろん個人的な技術に差もありますが、そこを目安に自分でケアできるように指導しています。ですから、それまでは「絶対に仕上げ磨きをしてあげてください。」と伝えています。

W: 子どもがセルフケアを出来るようになったかどうかを、どのように判断しますか?

O: 例えば、当院では、来院する際に、直前に自分で歯磨きをして来ていただきます。来院したら、まず染め出しをして、自分でできているかをチェックします。自分で出来ているとこちらが判断したら「仕上げ磨きは卒業です。」と伝えます。

W: どうしたらセルフケアが、上手になりますか?

O: まず基本的なことですが、幼児の頃から、お子さんが洗面所に立って、自分で歯ブラシを行う習慣づくりから始めてください。自分で磨いたのを見届けてから、必ず仕上げ磨きをしてください。

小学生になったら、自分でお口の中を意識しながら磨く「セルフケアの自立」を目指してみてください。ずっとお母さんが当たり前のように仕上げ磨きし続けると、お子さんはなかなかセルフケアできるようにはなりません。サポートしながら、自立をしていくよう促してみてください。

親としての責任〜親も健康意識を持ってほしい〜

O: お子さんのむし歯。こればかりは本当に親の責任です。子どもひとりで乗り越えられるものではありません。

W: 親の健康意識を変えないといけませんよね。親の意識が変わらないと、子どもは変わりません。ですから、親御さんもお子さんと一緒に来院して、専門家の指導を受けてほしいのです。中学生頃になると、お子さんの意思が確立してきますから、その時期から親御さんがお口の中の健康について教育するのは難しいでしょう。やはり幼少期からの教育が大事なのです。

O: それと、親のお口の中とお子さんのお口の中は似てきます。親が磨けていなければ、お子さんもむし歯のことが多いです。ですから、お子さんをむし歯にさせたくなかったら、親御さんもご自身の歯について見直してみてはいかがでしょうか。

W: 結局、お子さんだけを診てもダメで、親御さん自身が自分のお口の中のことを理解していて、どうしたら予防できるかということを分かっていないと、お子さんのむし歯はなくならないということですね。

O: その通りです。まずは、親御さん自身が正しいセルフケアを身につけることが大事だと思います。

■東京虎ノ門グローバルスクエア歯科

虎ノ門駅直結ビルの2階のオフィス街にあり、アクセス良好なクリニックです。

歯周病認定医をはじめ、全国の歯科医の約1%しかいない小児歯科専門医も在籍し、予知性の高い歯科治療および、インプラント治療など、包括的歯科診療を患者さま一人一人にご提供致します。

特に健康な口腔内を持続するための環境づくりに力を入れ、治療計画に基づいた「着実で丁寧な治療」を心がけております。

東京虎ノ門グローバルスクエア歯科 ウェブサイト
【情熱対談】歯周病を治すためには

【情熱対談】歯周病を治すためには

歯周病と聞くと、皆さんはどんな風にイメージされるでしょうか?

歯ぐきがはれている、血が出ているなどのイメージを持たれる方が多いかと思いますが、簡単に言うと、「プラーク(菌の塊)が原因で炎症を起こして、歯を支える骨が溶ける病気」です。

骨が溶けると歯が揺れてしまいますよね。そこに、咬む力や歯ぎしりなどの「衝撃」によって悪化してしまうのです。


今回は、そんな「歯周病」について深堀りし、どう対策していけば良いのか、熱く語ってみたいと思います。

■ Life Care Dental Office
院長 中山 俊太郎(S)

■ 東京虎ノ門 グローバルスクエア歯科
院長 林 洋介(H)

〜歯周病の予防はプラークコントロール〜

S: 歯周病の予防は、なんといっても「プラークコントロール」に尽きます。そのためにはセルフケアが必要となります。


例えば、歯と歯ぐきの間の隙間、いわゆる歯周ポケットが深いと、セルフケアが出来ない状況になってしまいます。ですから、歯周ポケットを専門家である私たちが、どうケアをするかが大事になってきます。

H: 歯周ポケットのケアの大切さは、僕も実感しています。僕はそれに対して、外科的な治療も取り入れます。それにより歯周ポケットを浅くする方法です。

S: それもひとつの方法ですね。私の場合は、外科的治療はそれほど行いません。というのも、プラークコントロールをしっかりと行い、歯周ポケットの中にプラークが入り込まない環境を作っていくと、出血がなくなり、炎症が起こりません。

すなわち、それは歯周病が起こらない状態を維持出来ているということです。たとえ歯周ポケットが深くても、コントロールができるのであれば問題ないと私は考えています。

〜治療で大事なのは、選択肢を提示して選んでもらうこと〜

S: 外科的治療をするかしないかは、どちらが良いというわけではありません。外科的治療をした方が、セルフケアがしやすくなるというメリットもあります。私のように外科的治療を行わない場合は、その分セルフケアだけではなく専門家によるメンテナンスが欠かせなくなります。

H: そうですね。手術をすることにもなるので、どちらの方針を選ぶかは、患者さんの意志によりますね。

S:その通りです。ただ、患者さんには専門的なことはわかりづらいですから、しっかりと選択肢を提示して、選んでもらうことが大切ですね。

〜歯周病のサイン、出血を見逃さないでほしい〜

S: 歯周病かどうかは、歯磨きをした際に「出血」があるかどうかを見てください。今までに一回でも「出血」がある場合は、確実ですね。

H: 歯がグラグラしているかという基準もありますが、意外と自分自身ではわからないものですからね。それに、「歯がグラグラして痛い」と感じた時点で、歯周病はかなり進行してしまっています。

S: そうなんです。出血しているということは、炎症が起きているというわかりやすいサインですから、ひとつの指標にしてください。出血以外で歯周病に気づく方法としては、鏡でご自身の歯ぐきを観察し、歯ぐきの色や引き締まり具合を見るというのもあります。

H: それに加えて「歯石がつきやすい」と感じたら、それも歯周病のサインだと思って欲しいですね。歯石というと、むし歯を想像しがちかもしれませんが、むしろ歯周病の場合につきやすいということを知っていただけたらと思います。

S: おっしゃるとおりですね。例えば、定期検診で「歯石がつきやすいですね」と言われている場合は、歯周病の可能性が高いです。

「歯周病かも」と思ったら〜患者さんも積極的に質問してほしい〜

H: 「歯周病かも」と思ったら、検査結果を積極的に聞いて欲しいですね。

実のところ、なかには保険点数に算定するために漠然と検査をして、説明もなくおしまい、という歯科医院があるのも事実です。

しかし、よい歯科医院であれば、検査をしっかりと行い、その結果をちゃんと説明してくれます。そして改善に向けて努めてくれるものです。

整理すると、次の4つのステップを踏んでくれる歯科医院は良い歯科医院だと言えるでしょう。

  1. まずはしっかりと検査をしてくれる
  2. 検査結果を見せながら、お口の中がどういう状況かを丁寧に説明してくれる
  3. どうしたら悪いところが良くなるかをアドバイスしてくれる
  4. アドバイスを受けて実施したことに対して、再検査(1と2のステップ)をしてくれる

それに合わせて、患者さんも各ステップで積極的に質問してみてください。

  1. 「検査結果はどうでしたか?」
  2. 「いま、どこが悪いのでしょうか?」
  3. 「どんなことに気をつけたら、よくなりますか?」
  4. 「どのくらい良くなったのでしょうか?次は、どうしたら良いでしょうか?」

良い歯科医院は必ず答えてくれますから、遠慮せず聞いてください。

〜歯周病治療にゴールはない⁉︎〜

S: 最初に申し上げた通り、歯周病治療ではプラークコントロールが大事です。治療の流れとしては次のようになります。

  1. まず1回目の検査を行い、その後プラークコントロールを行います。
  2. もう1回検査をして、どれだけ改善したかを確認する(再評価)。
  3. 改善していないところについて、どんな治療の選択肢があるのかを提案します。

基本的にはこれを繰り返し、治療を進めていきます。このとき、歯科医師や歯科衛生士は、ある意味「道案内役」となることが必要です。つまり、患者さん自身が納得し理解できるようガイドし、ゴールを明確にしてあげることが大事なのです。

ただ、ゴール設定といっても、「そこが最終ゴール」と言うのは適切ではありません。

H:なるほど。治療には通過点がいくつもありますからね。それに、正確に言うと「歯周病は治る」というものではなく、「歯周病が改善した状態を維持すること」ですから。ある意味、ゴールはないとも言えましょう。

S: そうなんです。ひとつひとつの治療は、通過点なんです。道案内役として小さなステップを示すことで、患者さん自身が治療に向き合いやすくしてあげたいと、私は考えています。そして、ステップをひとつひとつ乗り越えた成功体験から、改善後もずっとセルフケアをし続けてもらい、よい状態を保ちやすくしてあげるわけです。

H: 今おっしゃった「よい状態をキープする」というのは極めて大事ですね。治療が終わったらゴール達成、と言う考え方は間違っていますよね。

S: はい。実は、治療の終わりが最終ゴールみたいな言い方をする歯科医院は少なくありません。そうすると、患者さんは、その先のセルフケアもメンテナンスの受診もやめてしまいます。

H: そうですよね。「もう解決したからいいや」と。

S: そうです。それは違うとはっきり申し上げておきたいと思います。重要なのは、良い状態を維持していくことです。定期検診も、ただ受けるだけでは良い状態が維持されるわけではなく、セルフケアをした上で、歯科医院に相談しながら受けることをオススメします。

セルフケアを上手に続けるためのご参考として、こちらの記事をごらんください。

次回は、お子さまのむし歯とセルフケアについてお話していきたいと思います。

■東京虎ノ門グローバルスクエア歯科

虎ノ門駅直結ビルの2階のオフィス街にあり、アクセス良好なクリニックです。

歯周病認定医をはじめ、全国の歯科医の約1%しかいない小児歯科専門医も在籍し、予知性の高い歯科治療および、インプラント治療など、包括的歯科診療を患者さま一人一人にご提供致します。

特に健康な口腔内を持続するための環境づくりに力を入れ、治療計画に基づいた「着実で丁寧な治療」を心がけております。

また、お口の中に問題がある場合は「適切かつ精密な歯科治療」を行うことで健康な口腔内を取り戻し、それを持続するための環境づくりのお手伝いをさせて頂きます。

東京虎ノ門グローバルスクエア歯科 ウェブサイト
【情熱対談】歯科医療の現場で起こっていること

【情熱対談】歯科医療の現場で起こっていること

日本の歯科医療を変えたいという想いのもと、Life Care Dental Ofiice と、他の歯科医院と対話を行っていく対談企画の第1弾です。

今回は、虎ノ門グローバルスクエア歯科の林院長、丘副院長をお招きして、開業に至った想いや、お互いが歯科医療に対してどう向き合っているかについて、お話していきたいと思います。

■ Life Care Dental Office
院長 中山 俊太郎(S) / 歯科医師 中山 和嘉子(W)

■ 東京虎ノ門 グローバルスクエア歯科
院長 林 洋介(H) / 副院長 小児歯科専門医 丘 久恵(O)

Life Care Dental Office〜「ヘルスケア=ゼロ」を目指して〜

S: 僕らの医院は、開業して3年が経ちました。その間、患者さんの層もだいぶ変わってきました。最初は、とりあえず仮歯をつけてくれ、とりあえずなんとかしてくれ、といった応急手当ての患者さんが多くいらっしゃいました。ところが、今はそれが全くありません。他院からの紹介患者さんや、きちんと口腔の健康に向かい合ってお口の環境を良くしようとする患者さんがほとんどですね。

日本の歯科医療を変える、と言うと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、要は、当院に来たかたには「口の中のことで困ることがない人」になって欲しいんです。歯科医療の究極の目的は「ヘルスケア=ゼロ」なんです。つまり、日常の生活で、お口の中について健康を意識しないで、心配せずに生活できるような環境を提供するのが究極の目的です。

O: 「病気ゼロ」ということですか。

S: わかりやすいですね、「病気ゼロ」のほうが。当院は開業して3年経ちますが、こちらに来てから新しいむし歯をつくった人はゼロなんです。

  1. 虫歯ゼロ
  2. 歯周病ゼロ
  3. 歯科疾患ゼロ

そんな歯科医院を目指しています。次は5年、そしてその次は10年と、継続していく決意です。

開業〜「原因」を徹底的に取り除きたいという決意〜

H: 中山先生の強い意志、素晴らしいですね。いま、ヘルスケアゼロの話から始まったわけですが、それはLife Care Dental Officeとして開業しなければ達成できないものなのでしょうか?

S: そうだと思っています。

歯医者はもちろん医療を提供する仕事ですが、ビジネスの側面ももちろんありますよね。ですから、正直な話を申し上げると売り上げがないと成り立たないわけです。意志半ばで潰れてしまっては本末転倒です。

O: 慈善事業ではないっていうことですよね。

S: はい。つまり、開業していると、やはりどうしても売り上げを意識しないといけないんです。保険では、ほぼ予防に関する項目がないんですよね。でも、一方で、予防が習慣化して、効果をある程度実感できるようになるまでにも時間がかかります。つまり、普通に予防をやると売り上げに繋がらない。ですから、保険だけで患者さんのための予防をしようとすると、難しいことが多いのです。


私が必要だと考えていることは、病気の「原因」を徹底的に取り除くことです。そこに責任と使命感を持っています。なぜなら、原因を取り除かない限り、また新たに病気をつくってしまうじゃないですか。それでは歯科医療の意味がありません。「病気の原因であるプラークを徹底的に除去するシステムそれを実践したい」。これは一般的な開業医では、難しいことなんです。

虎ノ門グローバルスクエア歯科〜情熱は患者さんに伝わると信じて〜

H: 私は、虎ノ門グローバルスクエア歯科を開業しまして、8月で2年が経ちます。銀座線虎ノ門駅の、駅直結のオフィスビルにあります。コロナ禍でのスタートでしたが、今は少しずつ活気が戻ってきたところですね。専門性を掲げて、周りの企業のオフィスワーカーの人をターゲットにして開業しました。

診療理念については、Life Care Dental Officeと通じるところがあります。プラークコントロールが不十分な患者さんにどんな治療をしても、まるで意味がないのです。ですから、歯科衛生士にはプラークコントロールの重要性を患者さんに伝えるよう徹底させています。私自身もプラークコントロールを行うことがありますが、患者さんには、フロスの使い方も、自分がその場で実践しながら「こうですよ。ここを引っ張ってやるんですよ。」と指導します。

W: そこまでしてくれると、「あなたのことを治したい」と、自分のことを思ってやってくれている気持ちが、患者さんにも伝わりますよね。「私のことを考えてくれてるんだ、思ってくれてるんだ。」と、その熱意は患者さんの心を動かすきっかけになりますね。

H: そう信じて、僕も信念を持って取り組んでいます。具体的には、患者さんがセルフケアをできる口腔内環境をつくるというコンセプトを持っています。抜歯や不良補綴(ほてつ)の処置(不適切な詰め物の処置など)については、基本治療をやりつつ、歯科衛生士とともに患者さんにセルフケアのテクニックをつけていってもらいます。そして、セルフケアをしっかりできる状態で治療を終わらせるという診療理念を、開業当時から掲げています。患者さん向けには「セルフケアしやすいお口の中にする」とホームページに書いています。

W: そのあたりは当院と通じるものがありますね。

H: そうですね。プラークコントロールは、経営的にはマイナスですが、当院は時間をとって行っています。

どんな患者さんが増えているか

S: 本当に大切な情報は、患者さんはあまり掴めていない気がします。例えば、高い電動歯ブラシを使っていればいいだとか、いいペーストや洗口液を持っているから大丈夫だとか、そういった「物」に飛びついてしまうんですよね。

O: 根本的に大事な情報は、確かにそれほど患者さんには届きませんね。

S: 例えば、プラークコントロールがいかに大事かといった真実は、なかなか届かない。「物」の話は分かりやすいし、それっぽく話されるとそれが真実だと思い込みやすい。なかなか、ちゃんとその情報の根拠まで追う人は稀ですから。

W: はい。この記事を読んでくれる方々は健康への意識が高い方が多いかもしれません。しかし、住宅地の中で地域医療をしながら思うのは、そういう予防への意識が強い患者さんが増えた、という実感はあまりないです。目の前の「詰め物がとれた」「歯が痛い、しみる」といった悩みを解決したい方が、依然多いのは事実です。

問い合わせするときのポイント〜患者さん自身も積極的に質問を〜

S: お問い合わせする前に、大抵の患者さんはホームページを見ると思います。そこでどれだけセルフケアを大事にしているか、というところを見てください。技術や設備も大事ですが、「予防」をちゃんと徹底しているか、です。多くの歯科医院では、メンテナンスを大事にしています、などと書いてありますが、その後の歯の健康を考えたケアをちゃんとしてるのかも重要です。。

H: 確かに、技術をアピールしているホームページはよく見かけますね。ただ、本当に大切なことは、技術以外の歯に対する想いや、健康への向き合いについてしっかりと書いてること。

S: 口コミもある程度信頼できますが、まずは行ってみないとわからないことが多いでしょうね。行ったときに、ちゃんと本当のことを教えてくれるかどうかです。そして、患者さんはただ話を受け入れるだけじゃなくて、ちょっとでも分からないことがあったらら質問することが大事です。

次回は、歯周病について深堀していきたいと思います。

■東京虎ノ門グローバルスクエア歯科

虎ノ門駅直結ビルの2階のオフィス街にあり、アクセス良好なクリニックです。

歯周病認定医をはじめ、全国の歯科医の約1%しかいない小児歯科専門医も在籍し、予知性の高い歯科治療および、インプラント治療など、包括的歯科診療を患者さま一人一人にご提供致します。

特に健康な口腔内を持続するための環境づくりに力を入れ、治療計画に基づいた「着実で丁寧な治療」を心がけております。

また、お口の中に問題がある場合は「適切かつ精密な歯科治療」を行うことで健康な口腔内を取り戻し、それを持続するための環境づくりのお手伝いをさせて頂きます。

東京虎ノ門グローバルスクエア歯科 ウェブサイト
プラークコントロールとは

プラークコントロールとは

プラークコントロールとは、一言でいうと虫歯や歯周病の原因である「プラーク(細菌の塊)」を減らすための取り組みをする(コントロール)ということです。

「歯ブラシをすること」=「プラークコントロール」と思われがちですが、実はもう少し深い意味があります。

そこで今回は、虫歯や歯周病を予防するための「プラークコントロール」について考えていこうと思います。

「歯ブラシをすること」=「プラークコントロール」ではない

私は3つの意味があると考えています。

  1. 「プラーク」を歯ブラシやフロスなどを用いて除去し、コントロールすることです。一般的には、この意味で用いられています。
  2. 食事制限によってコントロールすることです。特に摂取する糖質を変える、例えば砂糖を減らし、キシリトールなど別の甘味料に代えることで、「プラーク」の質が変化し、虫歯になりにくいお口の中の環境を作ることが出来ます。
  3. 治療によってコントロールすることです。虫歯治療などで詰め物や被せ物を歯に装着することがありますが、それが歯の形に合っていないことがあります。すると、プラークを落とそうとしても歯ブラシが届かず、フロスが引っかかってしまいます。

    その場合は、再度治療することで、コントロールしやすくします。
    また、詰め物によっても、例えばジルコニアを使用すると「プラーク」は、ほぼつかないので、コントロールしやすくなります。

大切なのは、1つ目の「プラーク」を歯ブラシやフロスを使って除去することです。ただし、治療の状況によっては、3つ目の問題も生じるので、その場合は、歯科医師に相談してプラークコントロールをしやすい口内環境をつくっていきましょう。

(歯科医師:中山俊太郎)

意味のない歯医者の定期検診

意味のない歯医者の定期検診

最近、定期検診や、スケーリング(歯石除去)を希望される患者さんが増えている様に思います。それは、お口の中の健康をとても大切に考える人が増えているということです。

しかし、他の歯医者で何年も定期検診に通っていたのに、多くの虫歯や歯周病が存在し、治療したにも関わらず、セルフケアしづらいお口の中になってしまった患者さんが多くいらっしゃいます。

何故でしょうか?

せっかく歯医者に通っているのだから、絶対虫歯にはなりたくないですよね。
そこで今回は、お口の中の健康を維持するための「意味のある通院」とはどのようなものなのか、一緒に考えていきたいと思います。

自覚症状はないが、歯や歯ぐきに問題が起こっている

定期検診を希望される患者さんの多くは、お口の中に「痛み」「不快感」など問題を感じてはいません。ですから、歯医者で検診してもらい、「お口の中のお掃除」をしてもらえば、なんとなく安心なのかもしれません。

しかし、本当に「お口の中のお掃除」だけで大丈夫でしょうか?

☑ 1本1本の歯の虫歯の状態を定期的にレントゲンで確認してもらっていますか?
☑ 歯周病の検査は半年に1回してもらっているでしょうか?
☑ セルフケアの状態を客観的に評価してもらい、適切なアドバイスをもらっていますか?
☑ 生活習慣や食生活についても評価、アドバイスをもらっていますか?

虫歯や歯周病は生活習慣病であり、普段のお口のセルフケアや生活習慣、食生活が大きく影響します。定期検診による「お口の中のお掃除」をするだけでは、防ぐことの出来ない病気なのです。

ではどのように考えれば、虫歯や歯周病を防ぐことができるのでしょうか?

自分のお口の中の状態を知ろう

まずは、虫歯の状態、歯周病の状態など自分の歯や、歯ぐきの状態を知るために検査が必要です。そして、セルフケアのレベルを客観的にみてもらう必要があります。

歯や歯ぐき、セルフケアの状態がわからなければ、解決策を立てることができません。また、病気や治療などによってセルフケアしづらい状態になっている場所を把握することも必要です。

例えば、セルフケアしづらい状態として
☑ フロス(糸ようじ)を入れると引っかかる所はないでしょうか?
☑ どうしても歯ブラシが届かない場所はないでしょうか?
それはもしかすると、虫歯治療の詰め物や被せ物に問題があるかもしれません。

もし、問題があった場合にはセルフケアしやすいように治療が必要です。

「虫歯の治療をしたのだからこんなもんだ」と諦めてはいませんか?
そして、歯医者さんにまかせっきりにはなっていませんか?

しかし、病気を予防するためにはお口の中を知ることが、とても重要なのです。

「定期検診」ではなく「メンテナンス」という考え方

「定期検診」の目的は、虫歯や歯周病の早期発見です。
ただし、むし歯になったら歯を削ることになるので、早期発見では手遅れなのです。

対して、「メンテナンス」の目的は、お口の健康の維持管理です。
虫歯や歯周病の原因について知り、これ以上病気にならないようにするにはどうしたらよいか解決策を考え実行します。

患者さん自身がセルフケアをしっかりと行い、予防の専門家による適切なアドバイスが提供される。これこそが「本当の予防歯科」なのです。せっかく通うなら、「意味のある通院」=「メンテナンス」にしたいですね。

(歯科医師:中山俊太郎)

歯医者の選び方で未来が変わる

歯医者の選び方で未来が変わる

あなたは何を「目的」に歯医者に行くのでしょうか?

私たちは、大きく「2つの目的」があると考えます。
一つは「お口の中の問題解決」のため。
もう一つは「将来の自分の健康に対する投資」のためです。

今回は、2つ目の「将来の自分の健康に対する投資」とはどういうことなのか。それが、未来にどう影響するのか考えてみたいと思います。

歯医者に行っても問題は解決しない

多くの日本人はお口の中に何かしらの問題を抱えています。
なぜなら、お口の中の「病気」や「病気の予防」についての正しい知識が伝わっておらず、それを教育する機会も十分に用意されていないからです。

これは大きな問題で、責任は私たち歯科医師にあると、私は考えます。
まず、教育のひとつの機会は「親」なのですが、その「親」が「子」に適切に教育できる十分な知識がある人は、そう多くはいません。また、学校で教育すべきだという考えもありますが、「適切に教育できるか」と考えると、同様に十分とは言えないでしょう。

歯医者は治療以外にも「教育」という役割がありますが、それもうまく機能していません。
病気には原因があり、それが解決されることなく治療しても、また同じ問題が起こります。「教育」が十分に提供されてないために、自分で自分の口の中を守る「予防」がしきれず、一時的には解決されたように見えても、病気が再発し、根本的な問題は解決しない。
結局は、「歯医者のあり方」に問題があるのです。

あなたの将来についても考えてくれる歯医者を選ぼう

「歯医者のあり方」にはどんな問題があるのでしょうか?

多くの歯医者は、患者さんの「痛い」「詰め物が取れた」「入れ歯が合わない」「噛めない」「虫歯の治療をして欲しい」といった訴えに応じて、治療を提供します。
この一見何の問題もないような対応ですが、このあり方に問題があるのです。

歯医者は、「痛い」のであれば、「なぜ痛くなったのか?」「痛みの原因は何なのか?」「また、同じように痛くならない様にするためにはどうしたらよいのか?」さらには、「お口の中のことで困ることなく一生涯、健康的に生活するにはどうしたらよいのか?」を、患者さんと一緒に考える必要があるのではないでしょうか?

「予防」とは「将来の自分の健康に対する投資」

最近、「予防」という言葉や、考え方が広く周知されてきたように思います。
まさにこの「予防」が「将来の自分の健康に対する投資」なのです。
従来、歯医者は「何かあったら行く所」であり、治療してもらい、問題が解決したら終わり、また何かあったら行く所でした。

しかし、この負のサイクルでは様々な問題を起こしながら、少しずつ歯が失われ、将来健康的な生活が出来なくなってしまうことが、明らかになってきました。そこで、病気の原因について理解し、原因から解決し、問題を繰り返さないようにするといった「予防」という考え方が生まれました。

何か問題が起こってからではなく、問題を起こさないために適切に「予防」を提供してくれる歯医者に通う。この考え方こそが、将来の自分への投資となり、豊かな生活を可能にするのだと私は確信しています。

歯医者の選び方で、未来が変わるのです。

(歯科医師:中山俊太郎)

人生を変える歯医者選び<後編>

人生を変える歯医者選び<後編>

前回、「自分の通っている歯医者は大丈夫だ。」「歯医者の治療はこういうものだ。」そんな思い込みで20年間歯医者に通い、大丈夫だと思っていたお口の中を精密に検査したところ、23本の歯に大小の虫歯が見つかり、歯周病も発覚したというエピソードを紹介しました。

彼女は虫歯がどのような病気で、原因は何なのかを理解することなく、自分は虫歯になりやすい体質だと思いこみ、虫歯治療を繰り返していました。
そこで、じっくりとお話を伺い、お口の中の病気の原因や現状を詳しく知ってもらうために、精密検査をしました。
検査結果から、病気の原因を知ることは、自身のお口の中の現状を理解することに繋がり、治療にも、その後のセルフケアにも大きく影響します。

そこで今回は、予防や治療の方法や選択について考えていきたいと思います。

予防プログラムで病気への理解を深める

まず、大切なことは「病気の原因は何なのか?」ということです。病気とは、虫歯、歯周病のことであり、予防するには原因である「プラーク」を徹底的に除去する以外方法はありません。また生活習慣など病気のリスクになる問題の解決も同時に必要となります。
「病気の原因」について解決せず、「病気のリスク」について知ることなく治療をしても、今までと同様に残念な結果になるのは当たり前です。

そこで治療に入る前に、彼女は「予防プログラム」で、お口の中の病気の原因に対する具体的な解決法を知り、生活習慣と病気との関連、治療の必要性について理解を深めました。

プログラムを進めていくと、歯ブラシをした時の歯ぐきからの出血はなくなりました。以前まで歯ブラシの時に血が出ることはいいことだと思っていたので、彼女自身も驚きました。歯周病は、原因である「プラーク」を歯ブラシなどのセルフケアで除去すれば、自分で治すことが出来る病気なのだということに気づきました。
また、詰め物が合っていない場所や、フロスが引っかかる所はケアが出来ず、病気の原因が残ってしまう為、治療が必要だということが明確になりました。

治療後の経過を左右する予防プログラム

予防プログラムを受けたことで、歯周病の改善とともに、自分の歯を守るためのセルフケアの重要性、治療・メンテナンスの必要性について彼女は深く理解することが出来ました。今まで虫歯になってしまっていたのは「歯が弱い」からではないということ、原因について解決することが出来れば予防できるということを知り、自信をもてました。

また、自分ではどうしてもお手入れできない部分のケアやケアしているつもりでもできていない部分の再確認など、定期的に行うメンテナンスも必要であるということがわかり、3か月に1度通うことになりました。

通常メンテナンスの期間は歯医者の都合で決められることが多いですが、当院では自らメンテナンスの期間を患者さんに決めていただいています。歯医者や歯科衛生士に言われたから行くのではなく、目的をもって必要だから行くのです。
一般的には、なぜ予防が必要なのかを深く理解しないまま、「早く治療を終わらせたい」など患者さんの都合により、治療が先行してしまうことが多くあります。結果、自分自身で歯を守るための知識や方法を学ぶことが出来ないまま、病気を繰り返してしまうのです。

病気への理解が、治療の精度を高める

あなたは歯医者で、自分にとって最善最良の治療プランを教えてもらったことはありますか?
通常の歯医者では、問題の起こった部位、もしくは患者さんの審美的な要望によって計画された治療プランの説明があります。そして保険を適応するかしないかの選択を迫られます。
しかし、お口の中は全体で、1つの臓器です。ひとつの歯だけが問題に見えても、見えないところで問題が起きている可能性があります。特に歯周病やかみ合わせについてはお口の中全体で考える必要があります。
適切な選択をするために、お口の中全体を考慮した治療プランを知ることが重要になります。もちろん治療期間や費用についても考えなければなりません。

彼女は検査や予防プログラムによりお口の中への理解が深まり、出来る限り治療を繰り返す事がなく、自分の歯で生涯健康に生活したいという思いから治療プランを選択されました。


治療前の口腔内写真
治療後の口腔内写真
治療後の口腔内写真
治療前のレントゲン写真
治療後のレントゲン写真
治療後のレントゲン写真

<治療後の彼女の感想>
今までは、歯の病気の原因やそのメカニズムを知ることなく歯磨きをしていましたが、予防プログラムを通して深く理解することができました。治療後も、歯の引っ掛かりがなくなったことで、歯の手入れもしやすくなりました。
私の口の中を理解し、相談することが出来るパートナーが見つかりました。

(歯科医師:中山俊太郎)

予防プログラムと治療について詳しく知る

→人生を変える歯医者選び(前編)

人生を変える歯医者選び<前編>

人生を変える歯医者選び<前編>

歯医者選びで人生が変わる? そんな風に思う人は少ないかもしれません。

では、実際はどうでしょうか。患者さんの中には20、30代に虫歯の治療を繰り返し行い、40、50代になって歯を失う方が多くいらっしゃいます。1本歯を失うと他の歯にも問題が起こる可能性も高くなります。また、歯周病が隠れていることも多く、糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞など命に関わる病気のリスクも高くなります。
実際に、成人の8割が歯周病であるといったデータもあり、これは多くの日本人が抱える問題でもあります。

当院に来院される患者さんも同様に、「自分の通っている歯医者は大丈夫だ。」「歯医者の治療はこういうものだ。」と思い込み、取り返しのつかない状態になって初めて気付かれることも少なくありません。

そこで今回は、当院で治療が終了した、とある20代の患者さんが小学校から高校生まで同じ歯医者に通い続けて、残念な結果となってしまった本当の話をご紹介します。

「歯ブラシの時に血が出るのですが、大丈夫ですか?」

現在27歳の彼女は、幼稚園の時からたくさんの虫歯があったそうです。
小学校の時に虫歯治療を行った際、1度だけ歯ブラシの指導を受けた記憶があるそうです。
また、中学校の時には約3年間、歯並びが悪かったため、矯正治療を行っています。

矯正治療中、先生に「歯ブラシの時に血が出るのですが、大丈夫ですか?」と質問したところ、「悪い血が出ているから、悪い血ができったら良くなるから心配しなくて大丈夫だよ。」と言われたそうです。それからは歯茎から血が出ても「悪い血が出ているから、血が出るのはいいことだ」と思っていたそうです。おそらく矯正治療で歯ブラシがやりづらいこともあり歯周病になっていたのでしょう。更に、矯正治療中にも虫歯をつくってしまったようです。

高校生になり、ある時、数カ月前に虫歯治療で銀歯を入れたところに突然激痛が走り、歯医者を受診したところ、神経が死んでいると言われたそうです。その時、初めて歯の神経の治療を経験し、とても痛かったこと、神経が取られてしまったショックで、2度とこんな経験はしたくないと思ったそうです。

他にも、治療してもらった前歯が変色し、よくみるとデコボコしている所があったり、またフロスをすると引っ掛かったり、気がつくと色々な所に不具合が表れていましたが、歯の治療というのはこういうものだと思っていたそうです。

彼女はそれまでは定期的に歯医者に通っていましたが、これらの経験から、歯医者に対する信頼や期待が低くなり、足が遠くなったそうです。

23本の歯に虫歯が再発

彼女は24歳の時、仕事中に突然銀歯が取れて、約6年ぶりに違う歯医者に行きました。お口の中全体のレントゲンを撮り、診てもらった上で、先生から「歯はよく磨けているし、ほかの歯も取れた歯も、今回は大丈夫。」とのことだったので、取れた銀歯はそのまま戻してもらったそうです。

それから約2年後、今度は高校生の時に神経を取った歯の違和感を感じ、当院に来院されました。私たちは、症状の話だけでなく、これまでの歯医者での経緯や歯に対する思いなどを詳しくお伺いしました。その上で「本当はどうしたいのか?」「どうありたいのか?」と、お伺いしたところ、
「もう二度と虫歯にはなりたくない。」
「自分の歯で一生美味しく食事をしたい。」
という答えが返ってきました。

そこで、まずは自分のお口の中がどのような状態なのかをしっかりと把握するために、時間をかけて精密検査をしました。
結果、23本の歯に大小の虫歯を発見し、検査によって歯周病も発覚しました。
彼女が元々言っていた、違和感がある部位は根の先に膿がたまっている状態で、銀歯を取るととても大きな虫歯になっていました。別の2年前につけてもらった銀歯の下も大きな虫歯となっており、もしこのまま放置していたらこの歯も神経の治療をすることになっていたかもしれません。
精密検査の結果から、以前の歯医者さんに裏切られた気持ちが強まったそうです。

初診時の口腔内写真
初診時の口腔内写真
初診時のレントゲン写真
初診時のレントゲン写真

意外と行われていない”精密”な検査

このエピソード、実は他人事ではありません。実際に当院においでになった患者さんの多くが同じような状態だからです。数年のブランクはありますが、彼女は20年間歯医者に通っています。それにもかかわらず、なぜこのような悲惨なことが起こるのでしょうか?

まず考えられることは、精密に検査をされていないことです。実際に患者さんに聞いてみても、ほとんどの方が歯周病の検査、かみ合わせの検査を受けたことがない、もしくは覚えていないとお答えになります。彼女も歯周病の検査を受けたのは初めてで、歯ぐきから血が出るのは、歯周病という病気が原因だということをここで知りました。

虫歯、歯周病、かみ合わせについての検査が適切に行われていないために、歯科医師自身も問題を把握しきれていない可能性があります。虫歯の状態を正確に診断するためには精密なレントゲン撮影が必要ですし、また歯周病の検査をしなければ歯周病の状態もわかりません。さらに、かみ合わせの検査は、治療の精度を高めることにつながるのですが、手間がかかることもあり、ほとんどの歯医者で行われないのも現状です。

では、彼女は改善に向けて、どのような治療を受けたのでしょうか。次のコラムでは、実際に彼女が受けた予防プロブラムや治療について、詳しくご紹介したいと思います。

(歯科医師:中山俊太郎)

精密検査について詳しく見る

→人生を変える歯医者選び(後編)

30代の歯医者の選び方「予防」

30代の歯医者の選び方「予防」

あなたは、自分の歯が丈夫だと思っていませんか?
30代は、仕事や日々の生活が忙しく充実してくる年代のため、お口のトラブルがあっても、自覚症状が軽微のため、忙しいなどの理由で放置したり、対処療法的な治療で済ませてしまうことが多くあります。

一方、最近の厚生労働省の調査では20年前に比べて20歳までに虫歯になる人の割合は大幅に減っていますが、それ以降の年代では逆に虫歯は増えています。また、歯周病も同様に増加しているという結果でした。

つまり、気付かない内に、将来、歯を失うリスクを高めてしまっているのです。実際に、患者さんの中には40代で既に歯を失っている方もおりました。まさに、30代でお口の健康を管理し始めるかどうかが、人生を左右するといっても過言ではありません。

そこで、今回は発症や重症化する前に「予防」という観点から、30代からの歯医者の選び方について考えていきたいと思います。

■20歳までは、無意識に虫歯予防できている

では、なぜ20歳までの虫歯を減らすことが出来たのでしょうか?

  • 1つ目の理由は学校健診や、そこでの啓発活動が功を奏したことです。
    昔に比べて、予防の重要性を訴える歯科医師が増えたことによるものだと思います。
  • 2つ目は、啓発活動やメディアの情報により親御さんの虫歯予防に対する姿勢が変わったことです。歯ブラシや食生活の習慣が変化したものと思われます。
  • 3つ目は、フッ素による虫歯予防です。市販されているほぼすべての歯磨き粉にフッ素(※)が配合されているため、無意識のうちに虫歯予防しているのです。

以上の理由から、20歳までの虫歯を減らすことには成功しましたが、問題もあります。それは、20歳以降の年代では虫歯は増えているということです。

※フッ素については注意が必要で、使用すれば必ず予防できるというわけではありません。フッ素の効果や、正しい使い方については今後ブログで紹介します。

■虫歯が減ったことで、予防の意識が希薄に

20代前半から徐々に虫歯が増えていく原因は、お口のケアの習慣化が確立していないことと、親元を離れ食生活などの生活習慣に変化が起こったことによるものと考えられます。

つまり20歳までは、周囲の環境のお陰もあって無意識的に予防が出来ていた故に、お口のケアへの意識が結果的に希薄になってしまったということです。

本来的には、子どもの時にかかる歯医者にて、20歳までにお口の中の病気について正しく知り、お口のケアの習慣化の確立をさせることが重要なのですが、そこまで至っていないのが現状です。

したがって、20代から環境が変わる時に予防を意識できるかどうかが、その後の大きな差に繋がります。

30代の歯医者の選び方

■30代に起こりやすい無自覚の虫歯や歯周病を回避するには

それまで歯医者で正しい予防の方法や知識を提供してもらえなかったからか、あまり虫歯になった経験がないために、「自分は歯が丈夫だ」と思い込んでいる人や、歯周病を知らない人が存在します。

実際に、20代までは、それまでの蓄積のお陰で大きな問題が起きづらいのですが、30代以降の患者さんは、ほぼ皆さん虫歯や歯周病があります。

初期の虫歯はしみる、痛いなどの症状がありません。また歯周病は Silent diseases(沈黙の病気)と言われており、重症化してもなお自覚症状がありません。そのため、気付いたら大きな虫歯・重症化した歯周病になっているケースがとても多くみられます。

無自覚のまま悪化していくのを防ぐにはどうしたらいいのでしょうか?
それは「予防」について真剣に考えている歯医者を選ぶことです。お口の健康の知識が豊富で、予防の習慣を身に付けさせてくれる歯医者です。

一般的に歯医者に行く時は、どうしても「予防」ではなく「治療」がメインになってしまうので、「予防」が大切だと思いながらも「治療」が終わるころには、「予防」についての意識は薄れてしまうものです。

また、とても残念なことに保険制度による制限もあるため、予防の提供を諦めている歯医者も少なくはありません。

それでも諦めずに、将来に向けて一緒に「予防」を取り組んでくれる歯医者を選びましょう。予防医療があまり進んでいなかった時代に生まれた30代以降の人たちにとって、このことが将来に大きく影響するからです。

お口の健康のことで、生涯困ることがないように歯医者選びは慎重に考えたいですね。

(歯科医師:中山俊太郎)

メンテナンスの本当の意味とは?

メンテナンスの本当の意味とは?

「定期健診をお願いします。」「クリーニングしてください。」と希望する患者さんが、最近、多くなっています。

あなたは歯医者に行って、定期健診を受け、クリーニングしてもらえれば、歯は悪くならないと思ってはいませんか?

それは大きな間違いです。

そもそも、あなたが定期的に歯医者に行く目的は何でしょうか?
「きれいにしてもらうため?」「安心のため?」「虫歯の予防のため?」
どうせ行くなら意味のあるものにしたいですよね。

今回は定期的に歯医者に行く「本当の目的」について考えていきたいと思います。

定期検診、クリーニングでは予防できない!!

まずは言葉の意味を整理しましょう。
「定期健診」は病気や不具合を見つけることです。
「クリーニング」は歯石やプラーク(歯垢)、茶渋などを取り、お口の中をきれいにすること。

一般的な歯医者の定期健診では、虫歯・歯周病・咬み合わせのチェック、必要に応じてレントゲン検査を行い、問題があれば治療、なければクリーニングをしてもらい終了します。

本当にこれだけで大丈夫でしょうか?

そもそも定期的に歯医者に通っているのに、虫歯で治療になるのはおかしいと思いませんか?そうでなくても、その時だけのクリーニングでよい状態が続くのでしょうか?

実は、クリーニングをしてもらっても、きれいなのはその日だけです。次の日にはまた虫歯、歯周病になる状態に戻ります。結局、虫歯、歯周病を予防したいのなら、定期検診やクリーニングだけでは不十分であるということです。

虫歯、歯周病を予防するにはセルフケアが重要

虫歯、歯周病の「原因」は「プラーク」(ばい菌の塊)です。
普段の歯ブラシで「プラーク」をとることが出来ていないから虫歯、歯周病になります。それ以外の「原因」はありません。

そして、虫歯、歯周病を予防するためには「プラーク」を取る方法が一番効果的です。「私は一生懸命、歯ブラシしているのになぜ?」と思う方もいるかもしれません。

それは今の歯ブラシではしっかりと「プラーク」が落とせていないのです。虫歯、歯周病の予防をするには、毎日「プラーク」を歯ブラシで落とすことが必要です。落とせなければ虫歯、歯周病になります。

毎日、「プラーク」を落とせていないのに、定期検診に行った時だけ「プラーク」を落としても予防は出来ないのです。重要なのは、セルフケアのレベルを上げ、習慣化し、専門家のアドバイスを受けることです。 そして、必要なのは「メンテナンス」という考え方なのです。

メンテナンスが予防の鍵

「メンテナンス」とは言葉の通り、現状の維持管理をすることです。
定期検診、クリーニングとは目的が違います。

「メンテナンス」では歯科衛生士が、生活習慣、健康状態をはじめ、あなたのプラークコントロールの習慣の変化などを専門的に確認し、アドバイスを行います。また、セルフケアではどうしても落としきれなかったプラークを取ります。

メンテナンスの段階では病気はないか、回復に向かっている状態で、患者さんのセルフケアのレベルも高いので患者さん自身がすでに出来る範囲で予防しています。メンテナンスではそれを歯科衛生士がサポートするのです。これが「本当の予防歯科」です。

専門家によるアドバイスが適切に行われず、患者さん自身がセルフケアという責任を全うできない状態で行われる定期検診、クリーニングとは全く違います。

どうせ行くのなら意味のある通院にしませんか?
予防が目的なら、定期検診、クリーニングはあまり意味がありません。
必要なのは「定期的なメンテナンス」です。

(歯科医師:中山俊太郎)